「それはな、私と話した時のおまえの心が斧を作るということじゃ。」
神様は言いました。
「おまえが怒っていれば、その斧を使うともっと怒る出来事が起こる。
ではどうしたらいいのか分かるかの?」
男は答えました。
「本物の金の斧をもらいたいんだ!」
「本物の金の斧をもらって、どうなりたいんだ?」
「やったー!と本当に喜びたい。」
「答えが分かったようじゃな。
今度斧を落とす時は、やったーと喜んでいるとよい。」
と神様は言いました。
翌日、また男が斧を持って泉にやってきました。
今度は本当に金の斧がもらえると思って、喜んで斧を落とし、
喜んで金の斧を受け取りました。
男が斧を落としてみると、また、斧は真っ二つに割れました。
今度の斧は、飴でできていました。
男は怒って言いました。
「なんだ、飴じゃないか!」
神様は笑って言いました。
「ははは、でも甘くておいしい飴だぞ、上達したじゃないか。」
「どうしたら本当の金の斧がもらえるんだ・・!」
と男が言うと、
「いつもどんな心でいるかなんだ。
泉に来る時だけうれしい気持ちでいたら、
泉にいる短い間だけうれしくなるような斧になる。
長い間どんな心でいるか、だよ。」
それから1週間後、
男が泉に斧を落とすと、金色の飴に包まれたチョコレートの斧をもらえました。
「ははは、頑張っているようじゃの。まだ一週間なのに上出来じゃ。」
と神様は笑いました。
1か月後は
金の粉がキラキラ入った飴の斧、
3か月後は
金の粉が増えた飴の斧、
6か月後は
もっと金の粉が増えた飴の斧でした。
最初に泉に斧を落としてから1年たった頃。
男は泉には行きませんでした。
なぜって、もう金の斧は欲しくなくなったからです。
それどころか、金の斧のことはもうすっかり忘れていました。
男はいつもうれしい気持ちでいようと思って過ごしていました。
もう、誰かにうそをついたりだましたりするもありませんでした。
うそをついたりだましたりすると、自分も気分が悪くなるからです。
気分が悪くなると、またうじゃうじゃ虫の出てくる斧をもらってしまいます。
男は、何をすると自分がうれしい気持ちになるのか分かるようになってきました。
好きなことをしているとうれしい気持ちになれるし、
お腹が空いたらおいしい物を食べるとうれしくなるし、
疲れた時はしっかり休むと体が軽くなってうれしくなるし、
誰かが喜んでくれると、それもうれしくなることが分かりました。
男は、絵を描くのが好きでした。
絵を描いているとうきうきしてきます。
かっこいい絵をたくさん描きました。
ある日男が絵を描いていると、王様が通りかかって言いました。
「なんと素晴らしい絵だ!城に飾らせてもらいたい!」
そう言うと、金の斧よりもっとたくさんの金を置いて絵を持ち帰りましたとさ。